〔092〕大山 (1,729m)

標高差:989m

2006年11月09日(当時57歳)


日本百名山に戻る

鳥取県大山町大山
登り:3時間25分 (宝珠山、三鈷峰経由、天狗ヶ峰まで)
下り:2時間20分(上宝珠越から下山、金門観光含む)
トータル:5時間49分(休息時間含む)
深田久弥著の「日本百名山」から
  伯耆の国にありながら出雲富士という名もあるのは、この山が整った富士型に見えるのは、出雲から
望んだ場合に限るからであろう。私は大山を、松江の城から、出雲大社から、三瓶山の頂から、望んだ。
いつも一目でわかる、秀でた円錐形で立っていた。
Road Map :中国道から米子道に入り溝口ICで下りる。帰りは深夜割引が使えないので9号線をひたすら走る。
Route Map:大山寺から宝珠山、三鈷峰を登り、剣ヶ峰(敗退)へ。下山は砂すべりで遊び、大山寺の紅葉を楽しむ。
駐車場 大神神社 宝珠山 中宝珠越 上宝珠越 三鈷峰 ユ小屋 天狗ヶ峰
6:45 7:02 7:44 8:14 8:49 9:16 9:35 10:10
天狗ヶ峰 ユ小屋 上宝珠越 砂すべり 工事林道 大神神社 金門 駐車場
10:15 10:49 11:18 11:25 11:49 12:12 −−− 12:34
以前、大山寺周辺は全て有料駐車場であり、道路脇に停めた覚えがあるが、今はスキーシーズンまでは無料となっていた。 トイレの便座は保温が効いており感激。 6時45分に駐車場を出発して大山寺に向う。
大山寺からは ”日本一長い自然石の道”を歩き、
大神神社を通過する。
工事道路からの登山道は段々と勾配を増し、稜線に出る手前からは
結構な急登となる。 周辺はブナ林で見上げると黄葉が綺麗であるが、
葉は大分落ちていた。
分岐からの自然道を登り詰めて行くと、工事道路に出る。
この道も元谷へ続いている様だ。
初冠雪が薄っすらと残っている大山にもまだ陽は当らず寒々としている。
アイゼンは車に置いてきてしまったがアイゼン無しで大丈夫だろうか?
”中宝珠越”への道は小さな登り下りを繰り返し、感じの良い
縦走路が続く。 ”中宝珠越”から ”元谷”へ下りる道は通行止めと
なっていた。 写真の箇所は急登で結構難所であった。
振返ると ”豪円山”の向こうに日本海の海岸が広がっている。
”上宝珠”を過ぎる辺りから登山道に積雪が目立つ様になり、
踏み固められた積雪では結構、スリップしてくれる。
見上げると稜線に小さく ”ユートピア小屋”が見えた。
”宝珠山”から ”下宝珠越”に引き返し、”中宝珠越”に向う。
縦走途中で見た陽の当らない ”三鈷峰”(さんこほう)は寒々としており、
険しさが際立つ。 目の前の ”三鈷峰”には大きく廻り込んで登ることになる。
分岐から27分で下宝珠越の稜線に出る。 ここに標識があり、
”大神神社から0.8km、宝珠山へ0.5km”の表示があった。
”宝珠山”をピストンする
失意の剣ヶ峰敗退
  自分の度胸では敗退は致し方ないかなーと思うし、たかがハイキングに危険を冒す必要も無い様に思う。
巻機山のヌクビ沢で道間違いから地面全体がずり落ちそうな崩壊帯に入ってしまい、その時の恐怖体験がトラウマとなって残っており、それがびびり体質になっている可能性もある。
何故か楽しい山歩きであった
  目的未達成だったのに、何故か楽しかったとしか心に残っていない。最近は展望の効かない登山道を延々と歩くだけの山が多かったので、今日の様に短時間で目まぐるしく風景、環境が変わる山歩きが楽しいと感じたのかも知れない。
国道9号線で帰る
  この時間帯に高速道路を使うと深夜割引とならないので、交通費節約で一般道をひたすら走り帰る。 たった3,750円の節約に6時間も掛かってしまった。 国道9号線は日本海沿いに走るので、昔、潜りでよく訪れた海岸を見ながらの走行は思い出にふけることが出来て時間を忘れて走ることが出来た。
11月07日に日本列島を襲った強風で多くの木の葉が飛び散った
と思うが、元谷への道にはまだ紅葉、黄葉を充分見せてくれる。
22分で ”下宝珠越”への分岐点に着く。真っ直ぐに行けば元谷で
あるが、今日は ”宝珠山”にも行ってみたいので進路を左に取る。
大山最高峰
 大山は過去2回登っているが、2回共、百名山に指定されている弥山(1,709m)までだった。弥山から大山の最高峰である剣ヶ峰(1,729m)までの縦走は通行禁止となっている。 ならばユートピア小屋から廻れば問題ないのか。丁度、大山の紅葉も愛でたいと思っていたので行ってみることにする。
前日の移動

  紅葉時の大山の人出は半端では無い。'01年10月に登った時は登山口からの数珠繋ぎでハイカーを抜かすのに難儀した記憶がある。大山に登るには前日泊の早朝から登るべしを肝に銘じた。 ところが土曜日は雨予報が出されたので、急遽、会社を休んでの晴天狙いとした。 夜中の0時を回って米子道の溝口ICを下りた。 登山口まで行ってしまうと標高の高さで冷え込むかもしれないと思い、溝口IC直ぐ横の展望公園で車中泊とした。
登山道に小枝の張出した歩き難い道を10分で”宝珠山”(1,122m)の
山頂に着く。 廻りを樹木で覆われているしょぼい山頂であり、
スキー場側からの登山道の途中に過ぎない感じの山であった。
木立ちの隙間からは一応、日本海、大山が見えていた。
途中から夏山登山道側を見る。 階段状の夏山登山道より、
こちらの方が自然道であり歩いていて楽しく感じる。
”三鈷峰”へは手前のヤセ尾根を越えて登ることになるのだが、
西側斜面が崩壊しており、中々スリリングな歩きとなる。
2時間21分にて稜線の ”分岐点”に着く。 ここに出ると一気に
お日様に曝されることになるが、風がやたらと強い。
右に行けばユートピア小屋であるが、まずは ”三鈷峰”に向う。
”三鈷峰”から見たユートピア小屋と ”剣ヶ峰”に続く稜線。
”剣ヶ峰”の石碑も肉眼では良く見えている。
2時間31分にて ”三鈷峰”(1,516m)に着く。 写真には写っていないが(?)、
吹き飛ばされそうな風が吹き抜けている。 ここからは360°の展望が得られ、
北側には日本海の弓ヶ浜、南側には大山の山脈が望めた。
”ユートピア小屋”から登り始めると、あれだけ吹いていた風がぴたりと止んだ。
今の内にヤセ尾根を渡ろう。
小さな小屋ではあるが、内部は綺麗に掃除が行き届いており8名は宿泊
出来そうな広さであった。 小屋がきしんで揺れる程の風が吹いている。
気温は8℃、風が強く体感温度が随分低い。
ヤセ尾根の巾は靴2足分しかない。
南側の斜面は急峻でザレているので滑落すれば止らないだろう。 北側も急峻であるが低木が茂っているので滑落しても止まるかもしれない。 カメラを向けるだけで恐怖を感じる。
ヤセ尾根を振返り見る。 ヤセ尾根を通り越してナイフリッジである。
南斜面は完全に崩壊中、北斜面には僅かに草木が生えているが
急峻差は南斜面と変わらない。
”天狗ヶ峰”から南に伸びる ”槍ヶ峰”のヤセ尾根を見る。
その先にはピラミダルな ”烏ヶ山”が聳えている。
その奥は ”蒜山”の山々が見えていた。
3時間25分にて ”天狗ヶ峰”(1,710m)に着く。
ここまで来ると又、風が吹き出した。
ヤセ尾根の登り部分だけが風裏になっていた様だ。
”天狗ヶ峰”からの南面の落ち込みを見る。
ここで滑落すれば生きて帰れそうにはない。
ユートピア小屋まではヤセ尾根、ナイフリッジの連続である。 手掛かりの無いザレ場の
下りは怖い。 自分は怖い怖いと思っているが、こんなスリルが楽しみで登って来る猛者も沢山居ると思う。 くたびれた標識には ”毎年、数名の滑落者が亡くなっています。”と書いてあった。
本谷へ降りてから砂すべりの谷と下ってきたヤセ尾根を見る。
元谷は砂防ダムの工事中であり、この後は迂回路が続く。
”砂すべり”を下る為に小屋でスパッツは着けておいた。
富士山の須走りの様には行かないが、1歩踏み出せば1.5歩から2歩は進んでくれる。 条件の良いところでは滑りっぱなしで進んでくれた。
上流側から見た ”金門”。
下流側に廻り込んで反対側も見てみる。
大山寺周辺の紅葉をブラブラ歩きながら楽しむ。
何度も何度もシャッターを押してしまう風景が続く。
帰路とは反対方向であるが、桝水高原に行き、伯耆富士の大山を見る。ここから見る大山は崩壊が進んでいることを感じさせない綺麗な姿をしている。
12時34分、駐車場に帰り着くと朝は5台しか停まっていな
かった車が、今は満車状態であふれた車がウロウロしていた。
5時間24分で紅葉の大山を終える

宝珠山(1,122m)、三鈷峰(1,516m)、天狗ヶ峰(1,710m)

ユートピア小屋〜天狗ヶ峰:(20分)恐怖体験
  ”三点支持で安全確保”と言う上品な基本動作があるが、ここでは手で掴めるしっかりした物は何もない。足を踏み出す瞬間は一点支持である。しかもナイフリッジの足元は足を置いただけでボロボロと崩れてゆく。両端は300mはあろうかと思われる落ち込みである。 登りは良いとしても下れるんだろうかと、登り時に下りの心配までしてしまう。
剣ヶ峰敗退
  短い時間で色々考えた。あと100m、時間にすれば10分も掛からないだろう。 ここまで来たのだから
剣ヶ峰に立ちたい。 そういう考えが命取りになる。
引き返す勇気を持とう。 俺は何を目指してここまで
来たのか。 しかし、命あっての物種。よし、引き返そう。 ここで引き返すと一生の後悔になるかもしれない。でも剣ヶ峰に登ったところで誰も誉めてくれない。後悔も致し方無し。
下りが更に怖い
  敗退と決まった以上はこんな所に長いは無用、そそくさと下山に入る。 恐れていた下りの怖さは特筆もので、地面に降りたナマケモノよろしく、そろりそろりと一歩づつ下っていく。 日本アルプスでもこれ程危険な所はないだろうし、あれば立入禁止になっている。
烏天狗を見た
  やはり下りの尾根では風が止んでいた。下山時、剣ヶ峰附近に小さく登山者の姿が見えた。弥山から縦走して来ている様だ。 30分程でユートピア小屋に戻る。ここで軽く昼飯にして縦走者が降りてくるのを待つ。 中々降りてこないので下山に入るが、分岐点まで下った時に何の気無しに ”天狗ヶ峰”の方を見ると、”天狗ヶ峰”からの斜面を駆け下りてくる姿が目に入った。 歩いているのではなく滑り降りている感じで思わず ”えぇ〜〜!”と驚嘆してしまった。 後日、ネットで調べると積雪時に滑り降りるルートがあるようだ。
ユートピア小屋〜上宝珠越〜砂すべり:(25分)
  上宝珠越に下山して行くと、途中に烏天狗が降りてきた斜面があった。ザレ場ではあるが木立ちが多く、駆け下りれそうには見えなかった。 上宝珠越から砂すべりに降りる道は中々の急斜面で最後はロープを頼りで降りるがロープが無ければ降りられない程の斜面だ。
金門と紅葉
  大神神社まで降りてくると、”今日は休日?”と勘違いする程の多くの観光客が紅葉を求めて散策していた。
ハイカーの格好をした人も多いが、山に登る様子はない。 平日でこの人出であるから土日の休日にはハイカーが
加わり、想像を絶する人出になると思われる。 ある中年のおっちゃんが観光地図を見て、”五合目まで行きたい
のだが”と聞いてきた。 その人は変に縮尺された観光地図で五合目までどれくらいの標高があるのかも知らずに
行こうとしていたのだ。 一応、止める様に説得はしておいた。 大山寺の近くに来ると ”金門”と書いた道標が
あったので、どんな門があるのかと行ってみると、それは峡谷のことだった。 峡谷周辺の紅葉とマッチしていて、
綺麗な景色をしており、写真を撮りに来ている人も多かった。
 駐車場〜宝珠山:(59分)
 下宝珠越〜上宝珠越:(58分)2時間04分で上宝珠越に着く。ここを下りると砂すべりに出るので、帰りに行ってみる予定。
 分岐点〜三鈷峰:(10分)
当初の予定は
  計画では”山登りを楽しもう!”さんのHPで知った”野田ヶ山”も登って帰ろうと思っていたが、象ヶ鼻の分岐から見た野田ヶ山がヤブ山に見えたので行く程の山ではないだろうと中止した。 実は登り始めの下宝珠越分岐に左の張り紙がしてあったが、振子山が象ヶ鼻と野田ヶ山の間にあることを知らなかった。もし、予定通り野田ヶ山に向ったとしても振子山で引き返しているものと思う。
日本百名山』 大山の最高峰 ”剣ヶ峰”を目指したが強風だったので登頂は断念した。
だいせん
最高峰は剣ヶ峰
ズームで見た ”ユートピア小屋”。
分岐まで戻り、2時間50分にて
ユートピア小屋”に着く。
今日の最終目的地は ”剣ヶ峰”登頂なので、風で煽られるのが怖いが、行ける所まで行ってみる。
一人では無理をしない方が良いので、結局、注記の所で泣く泣く引返すことにした。
引返し地点から残りの尾根筋を見る。 風に煽られて南側(左側)に滑落すれば絶対に助から
ないだろう。 それを見届けるハイカーも居ないので引返すのが正解だと言い聞かす。
この ”砂すべり”の堆積した土石が ”大山”の
崩壊を物語っている様だ。
下山を続けて振り返り見た ”砂すべり”。
これだけの土石の排出を続けて ”大山”の山塊はいつまで持つんだろう?
下り:2時間3分 (大神神社まで)
2024年1月9日改定