1998年〜

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エンジン開発履歴』 ジェットスキー販売に商品企画は能力不足だった。
先に来た仕事は 開発コード:624の気筒内Diのエンジンだったが・・・
  排ガスの環境対策として先行開発して4stエンジンを試作していたが、平行して2st
Di(ダイレクト・インジェクション)の開発が進んでおり、そのDiエンジンのパワーアップ版を試作する仕事であった。
ボアφ80×ストローク78 2st3気筒 1,200cc 気筒内Diエンジンをしさくして、150ps/7,000rpmを得ることが出来たが、もっとパワーが欲しいとの要求が出て来て、試作エンジンを組立てただけで、量産化はお流れになる。
開発コード:882はDiを止めて独立排気チャンバーとする。
  もっとパワーが欲しいとの要求に堪えるべく 開発コード:822として、排気量を
1,200ccから1,300ccにアップして吸気をキャブレターに戻し、パワーを得る為に排気系を独立マフラーとして 180ps以上/7,000rpmを狙えるエンジンを試作する。
  順調にエンジン開発は進んだが、USの営業から、コストの高いジェットスキーは要らないと連絡が入って量産化は中止となった。 一体、商品企画は何をしているのか? 又もや膨大な開発費が無駄に終わってしまった。
商品開発の企画の不味さで量産中止となる。
  要求スペックが開発中にもコロコロ変わり、設計変更が度々加わり、前に進まない。 ここ4年間だけでも 789,890、624、882、410の開発機種が中止となり、大企業病からしれない、責任者が居れずに誰も責任を取らない。
巧く行った時には ”私が開発指示しました。”と言い出すやからは多い。
筒内ダイレクト噴射は2stエンジンにマッチしない。
  筒内ダイレクト噴射は燃焼ガスの吹き抜けが減り排ガスが綺麗くなるのだが、ガソリンは燃焼室に噴射されるだけで、キャブエンジンの様にクランク室を通らないので、
ピストン裏のガソリン冷却が無くなってしまい、ダイレクト噴射でピストン温度が下がると思いしや、逆にピストンが加熱してしまうのである。 希薄噴射するとピストンへの加熱負担が増えてしまう。
2stエンジンの4stエンジン化はPDSメーカーの倒産で失敗した
  個人的な思い付きであるが2stエンジンの筒内ダイレクト噴射を毎回噴射では
無く、2回転に1回の間欠噴射すればエンジンサイクルとしては4stと同じになる。
このエンジンを実際に回すにはPDCメーカーでプログラムを作って貰う必要があり
アメリカのOMC社にプログラムの作成をお願いして貰っていたが、いくら待っても
返事が来ない。 風の噂ではOMC社は倒産してしまったらしい。
    開発コード:624,882
直列3気筒1400cc2stエンジン開発


開発コード:624  上面図
開発コード:624  断面図
2st直列3気筒 φ87×78 1,391cc 170ps/7,000rpm
気筒内ダイレクト噴射 水冷集合排気チャンバー。
開発コード:624  前方外観図
ゼネレータ―のステータは水冷とし、各部への冷却し分配に使っている。
開発コード:624  後方外観図  排気チャンバー有り
エンジン本体より大きな水冷排気チャンバー。
開発コード:624  後方外観図  排気チャンバー無し
エンジン本体より大きな水冷排気チャンバーがエンジン出力を得る要である。
開発コード:624  主断面図
開発コード:624  主断面図
開発コード:882  主断面図  出力要求が170ps → 200psに変更される。
エンジン設計当初から200ps以上を得られる様に構想はしていた。
・まず、インジェクターは噴射容量が不足するのでキャブ仕様に戻す。
・排気タイミング可変バルブを追加する。
・3気筒集合マフラーを3気筒独立チャンバーに変更する。
・1軸2ウエイトバランサーを追加してエンジン振動を低減させる。
開発コード:882  主断面図
開発コード:882  水冷独立排気チャンバーレイアウト図
開発コード:882  水冷独立排気チャンバーレイアウト図
独立チャンバーの基本寸法は単気筒エンジンでテスト確認済み。
200ps/7,000rpmを目指してベンチ性能を開始する。
エンジン本体より巨大な3本独立水冷排気チャンバー。
目標とするエンジン性能は得られた。
実走テストに向けて完成した試作エンジンを船体に搭載する。
余りにも排気チャンバーが組付け難いので、怒りが爆発しそう!
昭和池実走テスト
882の船体も初お披露目、初試走となる。
3月の昭和池は余りにも寒く試乗する気には成らなかった。
船体が大きくて重く、目標の70mph(112km/h)は出なかった様である。
後に米国では速度制限65mph(104km/h)で規制される。
この後、アメリカでの実走耐久テストが始まるが、高出力エンジンで
船体抵抗が高いのでガソリンバカ食いで、出張メカニックはドラム缶を何本も運搬したとか・・・
無事に ”624”エンジンが組上り、実験関係者と記念撮影をする。
”624”用船体は ”624”開発中止を受けて
”882”用の船体となるが、その ”882”も開発中止となる。
この後、アメリカ ”OMC”社製のPDSに
噴射容量が不足していることが発覚する。
船体内に収める為に変な形状になってしまった水冷集合排気チャンバー。
ベンチ性能測定中の624エンジン。 可変排気バルブは外されて埋められている。
頼りになると思われた ”PDC”であったが、噴射容量不足とは思わなかった。