1985年〜

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エンジン開発履歴』 計画、試作までをアルバイトで行う。
JS300子供向けジェットスキーの開発。
  モトクロスエンジンの開発をしている頃にジェットスキー開発部門から子供用低出力ジェットスキー用エンジンを開発して欲しいの要望が来た。 ジェットスキーは当時、高出力化を目指して開発されていたが、子供用との要望で軽量化、低出力化は致し方ない所だと思うが、30ps/6,000rpmは欲しいと言うので、半端な設計は出来ないと思った。
KX250水冷エンジンをベースとする。
  当時はKX250を水冷化したファクトリーエンジン開発を仕事としており、勝手知ったるけKX
250エンジンをベースとすることであったが、KX250のエンジン性能 60ps/9,000rpmを
ジェットポンプ直結の6,000rpmに落とすと、30psの出力は得られなくなる。
そこでKX250のボア×ストローク φ66.4×72のロングストロークから φ76×64.9に
スケールアップして294ccとする。 これでも6,000rpmで30psは得られそうに無いので排気系はモトクロスレースと同じ、排気チャンバーを採用し、冷却水の注入で消音を計る。
量産化はされないと信じていたが・・・
  モトクロス車開発の合間のアルバイト的なJS用エンジン計画の仕事で、やっつけ仕事で30psを得ることが出来たが、30psを得る為にエンジン本体より排気チャンバーの方が大きくなり、エンジン全体としては軽量化が出来なかった。 なので目標出力を下げて排気系を軽量化しないと子供用として
量産化は無理と信じていたが、担当を外れてしばらくすると試作計画のままで量産化されていた。
JS300エンジン開発


エンジンの小型低出力化に伴って船体も小型化されたが、船体の小型化は乗り難さに繋がる。
太ももの太い方は正座乗りが出来なくなってしまった。
クランクケース吸気リードバルブで出力アップ、ロアクランクケースと一体化されたエンジンマウント等で軽量化を計っているのは試作エンジンと同じ手法である。
低回転で30psを得る為に全長が長い排気チャンバーを採用した。 全てを水冷化して排気系の加熱を防いでいる。
エンジン本体より排気チャンバーの方が大きいのが判る。
目標出力を30ps→25psに落して排気系の小型軽量化を計りたかった。
JS300エンジン組立図
当時は手書きの紙図面であり、図面庫でスキャニングを行いマイクロフィルム化して保管されていた。
丁度、スキャンが終わり廃却された紙図面と出合い業務違反であろうが、記念に頂くことにした。
エンジン本体より水冷の排気チャンバーの方が遥かに大きいのがよく判る。
エンジンルームに収める為に複雑に折り曲げられた排気チャンバー。
エンジン性能確保の秘密は水冷排気チャンバーとクランクケース吸気リードバルブにあり。
エンジンの主断面構造は水冷化されたモトクロス用エンジンと
変わらない。 エンジン潤滑は分離給油を採用している。
ネット上で数少ない JS300SXの記事を見付けた。
設計、試作、出力アップまでの仕事であった。
  30ps/6,000rpmの確保が一番大きな課題であったので、水冷化していたKX250のモトクロスエンジンをベースとしたが、もっと大排気量化して、排気チャンバーの小型軽量化をした方が、トータルでエンジンの軽量化が出来たかも知れない。
量産化されるとは思っていなかった。
  本業の仕事があったので、大急ぎで設計試作したが、後から思えば出来の良いエンジンでは無かった気がする。 なので量産化されるとは思っておらず、本業の仕事に戻って数年すると、量産化されていたのでびっくりであった。 量産を担当した設計者からは、量産をし難いエンジンだと散々文句を言われた。
  そもそも企画が間違っていたのである。