1987年〜

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エンジン開発履歴』 船外機開発は企画が曖昧で最初から ”ぽしゃる”気がしていた。
マリン・プロジェクト部門に転籍を命じられる。
  モトクロス車・オフロード車開発チームで御機嫌よく仕事をしていたのに、技術部に新たに
マリン・プロジェクトなる部門が出来て、50psの船外機を作るらしい。 そこに業務命令で転籍することを強いられた。
  どの部門の誰が船外機の量産化を目指そうとしたのか知らないが、船外機で商売するには馬力違いが必要であり、船に合せたトランサムの長さ違いも必要である。 ジェットスキーの様に船外機だけで航行することは出来ず、ボートとセットの販売も必要となる。 商売、販売も考えての船外機の試作なのか? 絶対に金の無駄使いで終わってしまいそうだ。
  技術部の誰も知らないが、カワサキは昔、小型エンジン部門で 10ps程度の船外機を量産しており、須磨の漁港で何度か見たことがある。
  嫌々、マリン・プロジェクトに移籍して、仕事を始めようとすると、エンジン回りの計画が始まっており、エンジンから下の部分であるトランサムの計画、製作をしてくれとなった。
  当然、ジェットスキーのエンジン計画、設計の経験者なので船外機のエンジン計画、設計になると思っていたが、罠に落し込められた感じで、一気にやる気を無くした。
  Y社の50psの船外機を徹底的にスケッチする。
関係者に船外機の設計、開発者が居ない以上、Y社の船外機を購入して材質も含めて徹底的に
スケッチする必要があった。 全ばらした部品のスケッチが終われば、本社の材質研究所に持ち込み材質を調べて貰う日々が続いた。 相手が海水なので、ステン、アルミと言っても耐腐食性が必要となるのである。
  試作船外機が出来て目標性能 50ps以上/6,000rpm、目標全開耐久300時間はクリヤー
出来、量産化に向けた細かい改善を行う予定であったが、案の定、量産化中止の命が下りて来た。
  誰が企画して、誰が中止を決めたのか? 量産化の目途が立ってから開発指示を出して欲しい。
元々、やりたい仕事でも無く、ましてトランサム部の計画試作なので、この仕事に対しては写真の1枚も残しておらず、開発メモも残していなかった。
やる気がまったく無かった船外機開発。
  技術開発部の中に製品企画部があり仕事を ”あほ”が多かった。
船外機の量産化の企画がどこから出て来たのか知らないが、製品企画部が承認したから開発が始まったのだろう。 船外機の量産化が出来たとして、それをどう販売に繋げるのかまったく考えていない様な気がした。 販売出来てこそ商品だと思うのだが。
船外機は馬力表示でクラス分けされる
  オートバイ、ジェットスキー、乗用車は排気量で区別されるが、船外機は出力(馬力)で区別され、50ps/600cc船外機でも 40ps/600ccの同じ排気量で廉価版が売られていることが多い。 どこでコストダウンしているのか?
開発コード 408  50ps船外機


参考船外機
ヤフオクで売り出しに出ていたカワサキの10ps船外機。
完動品らしいが、幾らで落札されたのか、落札されなかったのかが判らない。 ネットで色々調べてみたが、強制空冷、
単気筒エンジン程度しか判らなかった。
トーハツの現行5ps船外機。
随分と鮮麗されている。
製造年月日は判らないがカワサキの10ps船外機の中古品。
Y社の50ps船外機は4st4気筒エンジンとなっている。
まずはY社の2st3気筒 50ps船外機を買って来て、完成状態でのスケッチ、分解して部品単位のスケッチを徹底的に行い、各部品の耐食性を調べる為に、研究部の材質調査部門に部品を持ち込み材質を調査してもらう。
408試作エンジンではないが、これと同じく
ダイカストで製造出来る形状ではあった。
同じく類似船外機。
408と類似船外機。
と言うよりは 408がこれをスケッチしている。
船外機の各部の名称。ベベルギヤの設計には
梃子づった。 プロペラは技術部のかし子が
設計してくれた。
冷却水はエンジン、排気ガスを
冷却後、プロペラのセンターから排出される。
二重反転プロペラの開発。
他社の船外機をスケッチして他社と同じ船外機を作っても、ブランド力の差で売れる訳が無い。
上長から出て来たアイデアは燃費が良くなるであろう二重反転プロペラの採用である。
二重反転プロペラは別に新しい技術では無く、人間魚雷 ”回天”にも、タンカー、大型船にも採用例はある。
”2”と”3”がプロペラで、ベベルギヤによってそれぞれが反対方向に回転し、
推力の効率が上り、燃費が良くなる。
マリン・プロジェクトに転籍となる