2002年〜

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ジェットスキー開発履歴』 ついにジェットスキー用4stエンジン量産化の仕事がやって来た。
やっとジェットスキー用エンジンの4st化がやってきた。
  1997年からジェットスキー用エンジンの4st化が必要なことを力説して試作エンジンも作ったのにテストもさせて貰えず、環境対策としはDIエンジンが採用されてしまった。
キャブレター吸気2stエンジンはガソリンと吸気がクランクケースに吸込まれて、クランク室とピストン裏側を冷却するものであるが、DIエンジンではヘッドから直接、燃焼室にガソリンを吹きかけるのでピストン頂面は冷却されるがピストン下面は冷却されず、希薄燃焼が難しくなり、オーバーヒートを起こしやすくなる欠点がある。
アメリカのDIシステムのメーカーが倒産してしまい、DIシステムを自社生産しようとしたが、巧く行かずに4stエンジンに切替えることに決まった様である。
過酷な労働を強いられた。
  上層部の企画ミスを棚に上げて、4stエンジンを至急量産化して欲しいとの嘆願から
正月3ヶ日を出勤したが、設計室には暖房が入っておらず、マウス、キーボードが冷たくて図面が書けないので上長に訴えて一人1台の電気ストーブを買って貰った。
7820と7850を平行して開発する。
  7820のピストンストロークは55.4mm、7850のピストンストロークは69.2mmとして排気量をアップしている。 7820から設計を始めたが、当初から7850が
成立する様にクランクケースの形状を決めていたので、7850への移行は簡単に行えた。
何故減速機を介入しないのか。
  スーパースポーツ車用エンジンと同じく最高出力回転数を9,500rpmに設定すれば170psを発揮することが出来、ジェットポンプとのマッチングは減速機を1段噛ませて減速すれば良い様に思えるが、減速機を噛ませるとエンジンの回転数と船速とが同期しなくなり、加速フィーリングが悪くなってしまう。 (実証済)
自動車用4stエンジンを真似た訳では無いが・・・
  ジェットスキー用4stエンジンとして突き詰めていくとエンジン諸元は自動車用エンジンとそっくりな諸元になってしまうが、排ガス規制が緩く豊富な冷却水のお蔭で自動車用エンジンよりかは高性能なエンジンとなってくれた。
STX-15Rエンジン開発


開発コード:7820 ”STX−12F”の完成艇。
開発コード:7850 ”STX−15F”の完成艇。
2003年発売。 φ83×55.4 直列4st4気筒 120ps/7,200rpm。 ハルは ”1200STX−R”を流用。
2004年発売。φ83×69.2 直列4st4気筒 152ps/7,500rpm。 エンジン、ジェットポンプ以外は 12Fと共通。
開発コード:7820、7850
開発コード:7850  量産試作エンジン組立完了。
エキゾーストパイプが取付いていない左舷側を見る。
スロボと排気系が取付けていない量試作組立完了状態。
右舷、インテークパイプ側を見る。
スロットルボディが取付いた状態。
アルミのお弁当箱は水冷オイルクーラーである。
マグネシウム風に塗装されたアルミダイカストヘッドカバー。
アルミの筒はドライサンプの気水分離装置。
最高出力回転数 7,500rpmにて最高出力が得られる様に
長く伸ばされたインテークパイプ。
自動車のEXパイプによく似た4−2−1集合であるが、
EXパイプの全てに水冷ジャケットが設けられている。
この図面を書いた者は偉いが、これを鋳造した者も偉いと思う。
組立図面が手元に残っていないのでパーツリストで代用する。
ヘッド関係部品はオートバイエンジンとの違いは少ないが、
EXポートの周囲から冷却水がEXパイプに流れる様になっている。
カム室のオイル落とし穴はカムチェーン側と反対側にも設けている。
ヘッドカバー関係部品にはオートバイエンジンと変わりなし。
自シリンダの冷却水ジャケットは冷え過ぎを防ぐ為に浅く設定している。
ヘッドからの右側のオイル落しはオイルパンに返している。
エアーボックスにはフィルター機能は無いが、気水分離構造と、
消音、スパークアレスター構造を取られている。
アルミの茶筒ではブリーザーガスの気液分離を行っている。
EXマニホールドは前述した様に4-2-1集合で外周は冷却水ジャケットで覆われている。 4stエンジンは排気音が大きいのでウォーターマフラーを2つ使っている。
カバー類はオーリングでがっちり防水している。
ゼネレータのステータは約束通り?に水冷化している。
オートバイ用のエンジンは高回転化の為に出来るだけ吸気管を短くするが、
ジェットスキー用エンジンは中速域でピーク出力を得る為に自動車用エンジンと
同様に出来るだけ吸気管を伸ばしている。 4stエンジンでスロットルバルブを
ワンスロット化するとアイドリングを打たなくなるのにびっくり!
自動車エンジンのカムのオーバーラップを知れべると、ほとんどオーバーラップの無いことに気付き、バルタイをそれに合せるとアイドリングを打つ様になった。
ジェットスキー用エンジンの下にはハルが接近しているので、オイルパンを
設けることが出来ず、必然とドライサンプとなってしまう。
苦労して2ロータ―のスカベンジンぐローターを設置して、それがSTDと
なっていたが、実験スタッフにスカベロータ―を外されてしまい、それでも
何の問題も出ないことが確認された。 これは大きなコストダウンとなった。
オイルクーラーは豊富な冷却水があるので独自の水冷オイルクーラとした。
7850の後継機種
  先行して販売されたのは1、200ccの ”7820”であったが、2年後に1,500ccの ”7850”が
発売されて、以後、製造コストが同じで出力の高い ”7850”がメイン機種となる。
スーパースポーツ車開発チームに移動する。
  完全に何でも屋として見られており、なれひたしんだジェットスキー開発チームを離れてバイク開発のチームに移動するが、大きな仕事はまだ無かった。
ジェットスキーの開発は大きな局面を迎えていた。
  ジェットスキーの設計開発陣営はエンジン設計課長1名、船体設計課長1名のたった2名体勢に縮小されていた。 この2名の設計者で次々と新艇を出して行くのは驚きであった。
2023年までに販売された新機種。(既にジェットスキーの開発からは外れている。)
3人乗りのランナーバウト ”STX160X”には ”7850”のエンジンがそのまま使われている様だ。
これには驚いた。 立ち乗りシングル艇に ”7850”のエンジンが搭載されていた。残浮力を得る為に船体は随分と大きなっており、そのお蔭で艇の安定性が増し、素人の女の子でも乗りこなしていた。 昭和池で試乗する機会があったが試乗はしていない。我が愛艇である ”JS550”より数段乗り易いらしい。
更に驚いたのが ”7850”エンジンをベースにリショムル
スーパーチャジャーと水冷インタークーラを搭載し、
300ps/8,000rpmを得ていたことである。
ベースの ”7850”は152ps/7,500rpmなので過給に
より倍近い出力を出しており、耐久性的にどんな不具合があり、
どの部品を強化したのかを聞いてみたいところである。
国内販売価格は326万円で トヨタクラウンよりかは安いか!
左側の白い箱が水冷インタークーラであり、過給により150℃まで上がった空気を一機に30℃まで冷却し、出力アップに貢献する。 カタログ値によると圧縮比は10.6→8.2まで下げられていた。 8.2は見掛け圧縮比であり実圧縮比は過給により
もっと高くなっている。
ヘッドカバーを見る限りでは ”7850”と同じであるが・・・